不気味なほど何もないところを走った日

19日目(3月17日)/Millicent→Adelaide

日曜日なので町はとても静か。休日になると店が閉まってしまうのは田舎でも同じようだ。都会ならごく稀に開いている店があるだろうが、田舎だと店の絶対数が少ないので、全ての店が閉まってしまうことになる。こんな時に買い物したくなったらどうするのだろうか。
Millicentの町を発ち、国道1号線を北上する。景色が徐々に寂しげになる。そんなこともあってか、話すこともなくなりお互いに無口になる。都会を走っていれば、変わった店、変な看板など話題はたくさんあるが、あたり一面灌木しか生えてない場所では話題になるものなど出てくるはずがない。
町と町の間隔も徐々に開いてくる。Kingstonの町に来るまでの90kmの間、小さな集落が2個あるのみだった。
さらに車を進めるが、町は相変わらず少ない。次の町、Meningieまでは84kmも離れている。非常に退屈だが、とにかく前へ進むしかない。
海のすぐ近くを走り抜ける。真横に細長い半島が平行している。半島と我々の走っている道路の間には自然の水路がある。潟と表現すべきなのだろうか。いや、幅はどちらかというと川と言えるほど細い。そして、その水路を隔てて向こう側の半島も非常に細く、すぐ向こうに海があるようだ。時々海が姿を覗かせる。この半島はYoung-husband peninsulaという名前だそうで、一体はCoorong national parkという国立公園になっているようだ。

車を停めることができそうなスペースがあったので、降りてみる。100km/hの巡行のせいですっかりスピード間隔を失っていたようで、停まろうと思ったところよりも少々行き過ぎてしまう。
車を降りる。あたりはとても静か。昼間なのに物音1つしない。不気味とも言えるほど静まり返っている。進行方向の左側には水路が、右側には灌木地帯が広がっている。灌木地帯は延々と続いており、遙か向こうに山が見える。いったん車が見えないところまで行ったら、帰ってくることが出来ないような気がする。生物の気配も感じられない。茂っている木も赤茶けており、生きているのか枯れているのかわからないほどだ。孤独感が体を襲う。こんな不思議な体験をするのははじめてだ。少なくとも自分の周囲10kmには人は1人もいないだろう。こんな所で死んでしまったら白骨になるまで、いや白骨になっても見つからないかもしれない。進んでも進んでも何も見つからないような気さえしてしまう。これから進む道は、こんな何もない所なのだろうか。
左手の水路の方へ降りる。半分干上がりかけていて、お世辞にも綺麗だとは言えない。流れも全くない。国立公園とは言い難い雰囲気だ。干上がっている部分には塩分が白く固まっている。水のあるところには随所に油が見られる。なぜこんな所まで海水が入り込むのだろうか。そうだとすれば、このあたりは、延々と海抜数10cm程度なのだろうか。
歩いてみるがかなり滑りやすい。魚が棲んでいる時期もあるのだろう、干物のような生臭いにおいがする。時々動物の白骨死体がある。
Meningieの町に到着する。小さなスーパーでフルーツケーキとチョコクッキーを買って、近くの公園で食べる。たくさんのカモメがいて、食べ物を取り出すと何かくれないかという感じで頭上を掠めていく。調子に乗って、米粒や人参のかすなどを与えるとみんなで奪い合っていく。

公園のすぐ前の、Lake Albertという湖でペリカンを発見する。全部で7,8羽いる。体長約1mくらいで、後ろの方は黒い。ピンク色をしたくちばしはとてつもなく大きい。初めて見る野生のペリカンに2人とも感動する。そっと近づいていったが、気配を悟ったようで飛び立ってやや離れたところにまた着地した。Meningieを出発した後、面倒くさがって写真を撮らなかったことを後悔する。
Adelaideの方へどんどん車を進める。再び何もない台地が続く。ふとあたりを見回すと、ほぼ360度地平線に囲まれている。こんな景色は日本で見ることはありえないだろう。

Murray bridgeという町を通り過ぎ、Mt. Bakerの町へ入る。ガイドブックによると、町の古い建物がとても綺麗らしい。ガイドブックに載っていた古い駅は見つからなかったが、町全体の雰囲気は、車の窓ガラス越しでもよくわかる。Franklinsが古い煉瓦づくりの建物に入っているのを見つけた。
その他には特に観光地があるわけではないが、町の雰囲気が田舎独特なのでおもしろい。このあたりまで来ると、徐々にだが町の数が増えてくるので、通りすがりの人はわざわざこの町には寄ったりしないのだろう。全体的にとても静かで全ての物事がとてもゆっくり過ぎているような気がする。きっと誰の影響も受けずひっそりと暮らしているのだろう。交通量が少ないからか、道路もオーストラリアにしては狭く、隣近所との距離がとても近そうだ。

ドイツ風の街Handorf

続いて、Handorfという町へ行く。ここは、ドイツ人が移民してつくった町で、建物などはドイツの影響を強く受けている。

ハンドルフの街並み

ひっそりとしていたMt. Bakerの町とは対照的に、すっかり観光地化している。Craft, Souvenir, Patchwork, leatherなどいろいろな種類の店が並んでいる。お土産物屋にはドイツらしく、Beer GlassやBeer Mugなどが売られている。ソーセージ屋があったが本物のフランクフルトは売られていなかった。
典型的なドイツ風建物の写真を数枚撮る。後方からオープンカーが走ってきたので、こちらも写真に撮る。道路の両脇の並木がとても綺麗だ。
いよいよAdelaideに近づく。ここで、Adelaide後の進路について話し合う。わりと近くにあるカンガルー島へ行くか行かないか話し合う。島までのフェリー代金、1人片道$29×2+車1台$58=$$$と言うことでやめようということになった。これで良いのだろうか。カンガルーやコアラなどのたくさんの野生動物が見られるらしいので行きたい気がしないでもないが、お金がないしMelbourneでの足止めの分も取り戻さなくてはならない。

アデレードへ

Adelaideの町までの最後の山、Eagle on the hillを走る。下りのワインディングロードを走り抜ける。ニュージーランドの旅行中、Dunedinの町へ入ったときと同じような雰囲気だ。間もなく町へ入るという所にLook outがあったので車を停める。Accommodation guideの中から1件のCaravan parkを選び、彼女に意見を求める。ナビゲーターのことしか頭にない彼女は、そのキャンプ場の道を尋ねる。設備や料金について尋ねたつもりだったので無視されたと勘違いしてしまう。ここでまた喧嘩になってしまう。

いよいよ、山を下り町へ入る。Adelaideは、市内中心部が数100mの帯状の森に囲まれていて、居住区と働く場所が明確に区別されているという整った町だ。地図で見ていて期待していたので町を通るときにあたりを見回しながら走る帯状の森は、森ではなく緑地だったが、思っていたよりも緑地は太い帯になっている。
町中を横断して、海の近くのCaravan parkへ行く。ここはオーストラリアのCaravan park associationの1つBig 4のメンバーとなっている。ニュージーランドにいたときによく利用していたCaravan park associationと提携を結んでいたことを知っていたので親近感を覚える。Check inと同時にBig 4のメンバーの申し込みをする。これがあれば、Big 4のCaravan parkでは全て、10%のディスカウントが受けられる。
受付はとても綺麗だ。設備も整っていそうだ。何かの賞を取ったらしくて、受付の人も誇らしげに施設の説明をしてくれる。パンフレットも非常に充実している。City centre, Suburbの2種類の地図が無料で置いてあった。
車を中に入れて部屋に荷物を置く。テレビ、電子レンジを除くほとんどのものがついている。驚くべきことに、エアコンまでついている。
夕食はクリームシチューと水っぽいメロンを食べる。食後、シャワーを浴びるが、やたら強い水圧が気になった。ニュージーランド、 オーストラリアと長い間旅行をしているが、シャワーに問題があるところが多い。水圧が強い、弱い、お湯が熱すぎる、温度の調整が出来ないなど、問題がないところの方が少ないのではないだろうか。これは、前述のように自分で工事しているか、大工の腕がないかのどちらかだろう。
高い金を払って高級ホテルに泊まったらちゃんとした水圧のシャワーに入れるのだろうか。非常に気になる。しかし、それを知るのは今回の旅行ではないだろう。

勉強が苦手なボクの英語日記 ワーホリを終えて

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