熱帯に向かって走った日

27日目(3月25日)/Alice Springs→Elliot

快適に目覚める。8時30分、宿を出発する。Alice springs市内のColesで米、パン、シャンプーなどを買う。地図を見る限りでは、この日の宿はスーパーもない街になりそうだ。いろいろ買い込む。
再び、Outbackを走る。日差しがとても強い。サバンナのような草地、林が続く。所々に蟻塚が目に付く。砂と同じ赤茶色の突起物が地面からにょきっと出ている。不思議な光景だ。テレビの、"何とか大自然紀行"とか名前の付く番組に出てきそうな風景だ。
Te Treeという町で休憩する。とても小さな町だが、小さなアボリジニのGalleryやカフェがある。Mobilのガソリンスタンドで給油する。さすがに$0.90/l以上する。ついでにコアラ、カンガルーの45cのシール式切手を4枚買う。郵便を出そうと思って、その切手を封筒に貼る。貼った直後に封書は95cということに気付く。だが、貼ってしまった後では仕方がない。やむを得ず、もう1枚45cの切手を貼る。
さらに車を進める。Borrow creekという町で昼食時間になったので停まる。

Devil marbles

昼食後、早急にその場を立ち去る。しばらくした頃、Devil marblesに着く。

デビルマーブルズ

大きな岩が2つ倒れそうになりながらも互いにもたれ掛かっている。時々、日本の新聞や雑誌で見る光景だ。駐車場に車を停め、Walking courseを歩く。
大きくて丸い岩があたりにごろごろしている。説明の看板によると、このあたりは10億年前の岩盤でマグマが固まり、重なり合って不思議な光景ができたのだという。2つの大きな岩も人間が仕組んだのではなく、自然の景色だ。地球の力は凄い。すぐ側で、まっ2つに割れた岩を見つける。まるで桃太郎が生まれてきた桃のようにパカーンと割れていた。

Walking courseの端で水たまりを見つける。なぜか、オタマジャクシや蟹が棲んでいる。とても不思議だ。こんな水はすぐにでもかれてしまうだろうに。いったいどこからこの生き物達はやってきたのだろうか。水がなくなったら、今いる生物はどうなるのだろう。次の雨まで休眠して耐えるのだろうか。卵を残して死んでしまうのだろうか。いずれにせよとても不思議だ。
それにしても蠅が凄い。目、鼻、口と、ところかまわず水分のあるところに近寄ってくる。ここぞとばかりにFly sprayを撒くが風があるのであまり効果がない。
再び車に乗り込み走り出す。朝から目に付いていた蟻塚がさらにたくさん見られるようになる。朝方走っていた頃に見えたものは膝くらいの大きさしかなかったが、このあたりで見られるものは腰くらいまである。ガイドブックに"北へ行くに従い蟻塚が大きくなっていく"と書いてあったがまさにその通りだ。この蟻塚の大きさが我々が北上していることを知らせてくれる。
車を停め、蟻塚を観察する。

蟻塚1

蟻塚2

これほどの大きな蟻塚なのでまわりはありだらけかと思ったが、なぜかそれほど多くの蟻がいるわけではない。恐る恐る蟻塚にさわる。思ったよりとても固い。とても蟻の仕事とは思えない。ここまでつくるのに何年かかるのだろうか。いけないとは知りながらも、蟻塚を蹴っ飛ばしてみる。(※真似をしてはいけません)さすがに彼女に怒られる。蟻塚は思ったより固く倒れない。さらに力を入れて蹴ると、真ん中のあたりでぽきっと折れた。割れた断面は蜂の巣のようだ。だが、中には蟻はいない。どうやら全ての蟻塚に住人がいるわけではないようだ。たくさんある蟻塚の一部は、ゴーストタウン化しているに違いない。住めない理由が何かあるのだろうか。

長い間運転していたので、彼女に運転を代わってもらう。彼女にとっては、これがはじめてのオーストラリアでの運転だ。若干不安だが、これだけ交通量が少なければ問題ないだろう。次の町、Tennant creekまで20kmだ。おそらくカーブもほとんどないだろう。
さすがに、ほとんど問題なく運転している。日本でマニュアルの自動車を運転したことがないのに、ニュージーランド、オーストラリアと外国で運転しているのだから、凄い。
あっという間に、Tennant creekに到着する。一応、町に入る前で運転を代わる。
例によって、給油する。

アボリジニ

Alice springsにもいたアボリジニの人が大勢いる。昼間から何をしているのだろう。
ガイドブック等の文献を信じる限りでは、彼らはたくさんの補助金を受けているため、働かずに暮らしていけるのだそうだ。そして、そのお金で酒を買い、賭をし、トラブルのもとになっているそうだ。特に都会では住宅に優先的に入居することができるそうで大勢のアボリジニが自分の生まれ故郷を離れてしまっているようだ。そうかと言って、今さら補助金を減らすと差別だといって反対されることは目に見えているので舵取りが非常に難しいそうだ。
オーストラリアに来て約1ヶ月になり、多くのアボリジニを見てきたがいまだに彼らの生き方、彼らと白人の関係など不明なところが多い。スパーで買い物をしているアボリジニを見かけるが、どのようなものを食べているのだろうか。SydneyやAyers rock resortの博物館で見たビデオでは、カンガルーを追っかけて丸焼きにして食べていたので、てっきり昔と変わらない生活をしていると思っていたのだがどうも全員がそのような生活をしているわけではないようだ。そう言えば、Ayers rock resortでコーラを買っていたアボリジニを見たときには、先進的な生活をしている人もいるとも思ったが、果たしてどちらが実体なのだろう。いろいろな人がいるのだ、というのがきわめて単純で明確な回答だろうが、どうも納得いかない。Aboriginal landとして定められている地は、どこも町からは遠く離れている場所だ。そうした場所でも暮らすことができる人々は、おそらく原始的な生活を営んでいるのだろう。そして町周辺に住んでいる人は、もう少し進んだ生活をしていると考えればいいのだろうか。
白人との関係はどうなのだろうか。ニュージーランドでは、先住民であるマオリと白人の中は、白人の中に差別的感情があり、マオリの犯罪率が高いなど決して良好とは言えないが、学校でマオリ語を教えるなど、世界の中ではまだうまくいっている方だと考えられる。しかし、推測するに、オーストラリアにおけるアボリジニと白人の関係はそれほど良好ではないのではないだろうか。
また、彼らはどういう言葉を使って会話をしているのだろうか。マオリは、専ら英語を使っていたが、僻地で、白人など行きそうにもない地方ではいまだに、固有の言葉を使用しているのだろうか。Road houseで買い物をしていたアボリジニは、英語で意志疎通を行っていたが、1人の英語を聞いただけでは何とも判断はできない。とにかく疑問は多い。

アウトバックを爆走

再び走りはじめる。しばらくで、国道66号線との分かれ道に着く。Darwinへ行った後は、またStuart Highwayを南下してここでQLD州へ抜けることになる。T字路の角にガソリンスタンドがある。Caravan parkも併設されており、中でEmuが飼われているのが見える。まだ日が高いのでさらに進むことにする。次の町Renner sprigsまでは136kmだ。
Alice springs以南ではほとんど見られなかった枯れ川が目に付く。しかも水がある川でさえも時々見られるようになる。ある時突然緑が広がることもある。これらの緑はそう長く続くものではないが、これまでに見られなかった風景だ。
Renner springsの町へ着くが、まだ時間があるので約100km先のElliottまで北上する。
夕方近くになり、Elliottに到着。ガソリンスタンドが左端に見えたのでとりあえず給油する。Caravan parkも併設していたので泊まることにする。キッチン付きのOn site vanは何と$50もすると言うのでベッドだけの$40の部屋に泊まる。だがそれにしても部屋だけで$40とはあんまりだ。荷物をおいて買い物に出る。我々が泊まったCaravan parkは町の入り口にあり、もう少し先にBPのスタンドと小さなスーパーCaravan parkがある。Caravan parkを見つけたときは一瞬後悔したが、後の祭りだ。
スーパーへ入るが、大したものは売られていない。オレンジジュースとパンを買って出る。
我々の泊まっているCaravan parkの前で"Opening fee may apply after -."と書かれた看板を見つける。深夜の開店料のことだろう。お金を取るのは当たり前かもしれないが、高額の料金を払わせられた後だけに「弱みにつけ込んで」と思ってしまう。
夕食は、Club meetを挟んだサンドイッチを食べる。マーガリンはドロドロに溶けている。冷えたオレンジジュースで体を生き返らせる。

水の匂いをリアルで感じる

北上してきたためだろうか、かなり夜も蒸し暑い。ガイドブックに、"Alice springsから延々1000kmを越えたあたりから、空気の匂いが微妙に変わる。その時、人々の顔に押さえきれぬ喜びの光が走る。水の匂いだ。信じられないことだが、空気の中に明らかに匂いを感じるのだ。"と言う文言があったのを思い出す。最初にこれを読んだときは、信じられなかったが、こうして走ってきた今、その感覚がやっとわかった。確かに、空気の中に水の匂いを感じ取ることができる。これまでとは明らかに違う。生物はやはり本能的に水を感じ取ることができるのだろうか。じっとりした湿気でさえも懐かしい。驚異的と言えるほど乾ききった大地を走ってきたからこそ、そう感じるのだろう。
外へ出てみる。なぜかクジャクの親子がいる。ペットなのだろうか。街灯のまわりに、このあたり特有のカブトムシでもいないかと思ったが、蛾と小さな虫がいるのみだ。だが、便所の壁面に変わった蛙がいるのを見つけた。熱帯らしく、綺麗な緑色をした蛙だ。
夜、一度トイレのために部屋を出る。便所の前の木に大きな鷲が2羽泊まっている。高さだけで1mくらいありそうだ。カンガルーの死体に群がるような鳥だろう。羽を広げるとかなり大きそうだ。襲われたら負けそうな気さえする。刺激しないようにそろそろと部屋に戻る。

勉強が苦手なボクの英語日記 ワーホリを終えて

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